ヘングレと魔法使い(パティシエ)
≪コンクール5≫
コンクールが終わり、賞状をモニュメントを抱えた双子はコンクール会場を走っていた。きょろきょろと辺りを見回し、その姿を目にすると、勢いよく突進していく。
「のぉわぁ!?」
よく分からない奇声を発する彼の様子を気にも留めず、頬を紅潮させた双子がまくしたてる。
「見なさい!やってやったわよ、審査員賞!」
「金賞ではないですが、はじめてにしては上出来ではないですか⁈」
「認められたのよ!私たちの想いも、作品も!」
「分ったから、とりあえず落ち着け」
「これで、落ち着いていられますか!」
興奮冷めやらぬ様子の双子に気圧されていたが、とりあえず落ち着かせようとする零覇。しかし、すっぱりと声をそろえた双子に切り捨てられる。何時もなら頭痛を堪える仕草をする零覇だったが、今日は違うらしい。苦笑しただけで、何も言わずぽん、と双子の頭に手を置いただけだった。きょとんとする双子に、彼は何処か泣きそうな、でも、今まで見たどんな表情よりも優しく、嬉しそうに笑むと、一言、呟く。
「よく、やった」
その笑みに一瞬おどろいた二人だったが、くしゃりと顔を歪ませる。ヘンゼルは唇を噛みしめて俯き、グレーテルは眼尻に涙を溜めながらも、照れ隠しの様に胸を張る。
「当然じゃない!私たちは何にも負けてらんないんだもん!」
そんな双子を目を細めて見つめる零覇。彼がゆっくり口を開いたその時、違う声が割って入った。
「君らは賭けの最中だもんね」
暖稀が、初老の男を連れてゆっくりと歩み寄ってきたところだった。彼は、にっこりと笑むと、双子に声を掛ける。
「とりあえず、おめでとう。二人とも。よく頑張ったね、ろくな師匠もなしに」
「ありがとうございます!」
「おい、どういう意味だ、そりゃあ」
2人への称賛とともに、さり気なくディスる暖稀に零覇のツッコミが入る。渋面の彼に、暖気は満面の笑みを見せる。うすら寒いものを感じさせるその笑みに、零覇の顔が引きつる。
「意味、分からない?」
目を泳がせる零覇をにこやかに見つめていた暖稀だったが、気が済んだのかふっと、穏やかな顔になる。
「答えは、出たんだろ?」
その言葉に、零覇がゆっくりと微笑を浮かべる。何の話か、と首を傾げる双子に向かい合う。一瞬の間をおいて、はっとした顔をする双子に微苦笑を向ける。
「正直、あそこであんなもん、出してくるなんて、想定外もいいとこだ」
彼は、訥々と言葉を紡いでいく。
「お前らに、出会う前の俺だったらきっと、目を逸らしてただろうな。俺にとって、何より触れられたく無い思い出だから、な。けど、あれを作ったのがお前らだったから、あれだけ楽しそうに菓子を作るお前らだったから、目を逸らせなかった。逸らさないで、ちゃんと向き合えたんだ。あの菓子にも、それ以外にも」
彼自身、何を言いたいのか纏まらないのだろう。唯々、言葉を連ねていく。双子には、その言葉の半分も理解できなかったが、その晴れ晴れした表情と、滲む雰囲気に彼の中で何かしらの決着がついたのだ、という事だけは分かった。そして、彼は、憑き物が落ちたような顔で、笑って言う。
「ありがとう」
突然のお礼にぽかんとした顔をした双子だったが、想像以上の反応に、狼狽える。
「と、当然じゃない!今更、何言ってんのよ!」
「えっと、あの、師匠?」
あんまりな弟子たちの姿に半眼になったものの、咳払いして意識を切り替えた零覇は、すっと真剣な表情になる。
「おまえらは、菓子を作るべきだ」
脈絡なく変わる話に付いて行けず目を見開いて凝視してくる二人に、淡々と言う。
「だが、お前らの技術はまだまだ未熟どころじゃない。ハッキリいって、素人に毛が生えた程度だ」
悔しそうに唇を噛み、俯く二人の頭の上から声が降ってくる。
「だから、俺が全部教えてやる」
はっと顔を上げる双子。零覇はいたずらっぽくにやりと笑う。
「俺も久々に、なんか作りたくなったわ」
それは、双子が待ち望んだ言葉。一瞬間をおいてそれが現実で、零覇が発した言葉であると理解した双子は、目を輝かせる。
「お前らの、勝ちだ。弟子にしてやるよ」
その言葉を聞いた瞬間、双子は歓声を上げ、人目をはばかることなく、抱き合った。結果発表時と同じく、ぎょっとした視線が集まるが本人たちは気付いてないようだ。零覇は苦笑しながら見ていたが、唐突に視線を巡らすと幾分かたい声を掛ける。
「そういう訳なんで、お返しすることはできなくなりました」
急に緊張をはらんだ彼の様子に訝し気な顔をした双子だったが、その視線の先を見て顔を強張らせた。
「……お父さん、お母さん」
掠れた声でヘンゼルが呟く。
そこには、渋面を浮かべた勝唯と、微笑を浮かべた慈愛が立っていた。
「結果はご存知ですよね。約束通り見にいらしてたんですから」
零覇が静かに声を掛ける。ピリピリとした空気が彼らを包む。双子を庇う位置に立った零覇は挑むような顔で勝唯と慈愛を見る。対する勝唯はただただ渋面を浮かべるだけだ。
「こいつらは、本気でパティシエになりたいと思い、ここまで自力でやって来た。その覚悟は本物だし、才能も本物だ。それが分からない訳じゃないでしょう?」
それでも、勝唯は何も言わない。こらえきれず、零覇の背後からグレーテルが声を上げる。
「私たちは帰らないわ!パティシエになるんだもの!」
しかし、勝唯の視線が向けられると、彼女は大きく体を震わせて零覇の影に隠れる。ずっとこのことで衝突してきたとはいえ、頭ごなしに否定されてきたことはしっかりトラウマになっていたらしい。特に最近はその喧嘩をしていなかったから尚更堪えるようだ。
すると、ヘンゼルが今度は前に出た。庇ってくれる零覇のかげからでて、真正面から両親を見据えたのだ。
「僕は、パティシエになりたいと思いながらも、ずっと、無理だとも思ってたんです。僕は稲菓家の跡取りだし、あなた方に歯向かうなんて考えもしなかったから。でも」
真っすぐに両親を見つめる。彼らの想いが伝わるように。
「やっぱり僕たちはパティシエになりたいんです。今回の事を通して再確認しました。諦められないんです」
そう言うと、深々と頭を下げる。
「僕たちがパティシエになることは今認めてもらおうとは思っていません。まだまだ未熟ですから。でも、いつかは認めてもらうつもりだし、ごめんなさい。やっぱり稲菓家は継げません」
そこまで言う息子を、苦虫を噛み潰したような顔で勝唯は見つめていた。ゆっくりと口を開いて出てきた言葉は。
「ダメだ」
勢いよく頭を上げたヘンゼルは愕然とした表情を隠せない。零覇も険しい顔をして口を開くが、先に勝唯が重々しく呟く。
「確かに、お前たちは相当な覚悟を持っていることは分かった。だが、伝統のある稲菓家を私の代で潰すわけにはいかんのだ」
「そんな!」
悲鳴を上げるグレーテル。理由が理由だったため、暖稀も参戦する構えを見せた。周りでざわざわと様子を窺う音も聞こえる。ここまで来たら、せめてグレーテルだけでも。そうヘンゼルは決意して、チラリと妹を一瞥する。それだけで、彼の片割れにはその覚悟が伝わったのだろう。青ざめた顔でヘンゼルを止めようと口を開く。その時。
「なんだなんだ。一体何の騒ぎだぁ?」
闖入者が現れた。
突然現れたのは、何処か気だるげ、かつ、くたびれた感のある薄汚れた軽薄そうな男だった。男が現れた瞬間、沈黙が落ちる。だが、一呼吸おいて。
「兄さん⁈」
「馬鹿兄貴⁈」
「王我⁈」
三つの叫び声が響く。叫んだきり絶句して動かなくなった三人にその状況を作った元凶の男―王我は能天気に手を上げて挨拶をする。真っ先に立ち直ったのはグレーテルだった。
「なんでここに居んのよ馬鹿兄貴⁈だって、ええ、蒸発したんじゃ⁈」
「おい、お前、どっからどうすれはこんな反応されんだよ。つーか、知り合いなのか?」
半狂乱のグレーテルの言葉に被さって割り込んだのは零覇だった。嫌そうな顔を王我に向ける。にやりと笑った王我は零覇と肩を無理やり組んでもたれかかる。
「可愛いだろ?俺の妹。あ、因みに、そこで呆けてんのは同じくらいに可愛い我が弟。その奥は我が敬愛せし父上様だ。オーライ?」
「……兄妹、だと⁈」
「そういうこと―」
あまりに軽い言葉に眩暈を起こす零覇。ああ、コイツと血がつながっているからこの双子もぶっ飛んでんのか、とよく分からない方向に感心する。そんな現実逃避をしている零覇の耳に今度は勝唯の怒号が飛び込んでくる。
「おまえ、今まで何処にッ⁈というか、よくおめおめと顔を出せたものだな⁈」
顔を真っ赤にして喚く勝唯。かなりの迫力だ。かなりの迫力のはずなのだが、対する王我はというと、きょとんとした顔で見返すのみである。
「ん?何で?」
「な、何でってお前!」
「何すっとぼけてんのよ!アンタが紙切れ一枚おいてどっか行くから、そのしわ寄せをこっちが喰らってんじゃない⁈」
そう。王我は元々彼らと一緒に住んでいたのだが、ある日突然紙切れ一枚残して蒸発したのである。そこからは音信不通。居場所も掴めなかった。跡取りとして期待していた息子の突然の蒸発に勝唯は発狂し、落ち着いたのちは、それがトラウマになったのか双子に半軟禁状態で跡取り教育を施したのである。つまり、この男が全ての元凶なのである。
勝唯に続き、グレーテルまでもが喚きだす。だが、当の本人はいまいち理解が及んでいないらしい。首を傾げている。
「ちゃんと書いといたろ?"心配しないでください。探さなくていいからな?"って」
なんとなく状況を理解した零覇ががっしりと王我の肩を掴み、問う。
「それだけか?それだけ書いただけなのか?」
「他に書くことあるか?だって、もともと、ちょっとした武者修行の後は帰るつもりだったし?」
「はぁ⁈」
再び、叫び声が上がる。今度は数が少し増えている。けろっとした顔で王我が言うには、いつか稲菓を継ぐうえで、少しでも力をつけておこうと武者修行に出ることにしたらしい。
「だから、"探さなくていいから"って書いたろ?」
そうだった、こういう奴だった。零覇が崩れ落ちる。勝唯とグレーテルは体を震わせ、ヘンゼルは魂を飛ばしている。その気になれば何でもできる、頭脳明晰、容姿端麗、運動神経抜群等々、完璧超人を地で行く男であるのだが、如何せん突拍子もないことを突然かつ言葉足らずでやらかすことがあった。今回もそのケースに当てはまってい居たらしい。
「いやぁ、本当はもう少ししてから帰るつもりだったんだけどさ、零覇からお前らの事聞いてさ、戻ってきちゃった」
ニッコリと可愛らしく言うのだが、如何せん、男である。その場の皆が崩れ落ちる。
「……というか、師匠。うちのバ…兄さんと知り合いだったんですね…」
「…馬鹿兄貴って言って良いと思うぞ…。腐れ縁ってやつでな、ちょくちょく電話したりしてたんだ。まさか、お前らの兄貴なんて思ってなかったけどな…」
現実逃避気味に尋ねてきたヘンゼルに力なく話を合わせる零覇。そう言えば、時々夜中に電話してたなぁ、と一向に現実復帰しない兄をグレーテルが半眼で見つめる。
微妙な空気が落ちたが、まぁ、ともかく、と言った王我が雰囲気を一変させる。流石に一流財閥の跡取りである。一気に迫力が増す。それにつられ、緊張した面持ちをする双子だったが、王我自身は真剣ながらも優し気な眼差しで弟妹を見つめる。
「稲菓は俺が継ぐ。お前らは好きなようにやれ」
それでいいだろ?と勝唯に視線を向けると、勝唯はもごもごと口を動かすが、意味のある言葉をなかなか発しようとしない。すると。
「もう、良いじゃないですか?」
慈愛がそっと口をはさんできた。全員の注目をうけ、恥ずかしそうに頬を染めたが、その名の通り、慈愛に満ちた眼差しを息子と娘に向ける。
「貴方もさっきおっしゃったではないですか。いつの間にこの子達はこんな顔をするようになったのか、って。それって、この子達の歩む道がパティシエであるという事の何よりもの証明ではなくって?」
ぐっと言葉に詰まった夫をチラリと見やると、双子におっとりと微笑みかける。
「王我も帰って来て家を継ぐつもりだそうですし、好きにおやりなさい。そのかわり、何があっても頑張りとおしなさい」
「……っ、はい!」
「おお、流石母さん。やっぱりウチって、かかあ天下か?」
力強く背を押してくれる母に半泣きになりながら頷いて見せる双子。親子三人泣き笑いを向けあう、という感動シーンであるのだが傍から見ていた王我がズレた茶々を入れたため、何処か白けた空気が漂う。作り出した本人はその空気に気付いてい無い様だ。代わりに勝唯が王我を睨みつけた後、やれやれと言わんばかりに首を振る。
「稲菓家の名に、泥を塗るなよ」
たったそれだけ、双子に告げると、そっぽを向く。双子が完全に家から解放された瞬間だった。感極まる双子からの視線と、周囲の生温かい視線が居心地悪かったのだろう。照れ隠しの様に王我を再び睨みつける。
「王我!お前は再教育だ!その馬鹿極まりない頭を今度こそ矯正してやる!」
「んん⁈なんかとばっちり⁈」
自信の天然っぷりを自覚していない王我がとばっちりを受けたと勘違いをして悲鳴を上げると、真剣な表情で何かを思案し始める。再び家出でも計画しているのだろうか。そして、それを察知した勝唯が凄まじい勢いで王我を捕獲するための包囲網を構築し始める。がやがやと賑やかになってきた。
嬉しそうな笑顔でそれを眺めていたグレーテルだったが、グイッと眼尻に滲んだ涙を拭い、零覇に挑戦的な目を向ける。ヘンゼルも力強い眼差しをしている。
「ようやく弟子入りも出来たことだし、アンタの技術、全部モノにしてやるわ!そして今度の目標はアンタを超すことよ!」
「ホォ?やれるもんならやってみな」
ビシっと指よ突き付け高らかに宣言するグレーテル。にやりと笑って零覇が受けて立ったのだが。
「あのぉ、その事なんだけどさぁ」
暖稀がそろりと口を出す。三対の視線をうけ、ヘラりと笑った彼は、自身の背後に視線を向ける。そこには初老の男が立っていた。誰だ?と双子が首を傾げていたが、その傍らから掠れた声が発される。
「……教授」
零覇の顔を見上げると、彼は少し青ざめた顔を強張らせていた。一言呟いたきり完全に沈黙した零覇に代わり、暖稀がそっと説明してくれたことには、彼らの通った専門学校の教授であり、特に零覇の才能を買っていた人だという。今日零覇が来ていることをしり、会いに来たらしい。ゆっくりと教授が口を開く。
「久しぶりだな、零覇。一時期はどうなることかと心配したが…」
双子に視線をむけ、顔をほころばせる。
「もう、大丈夫そうだな」
「っご心配、おかけしました」
暖かい言葉に零覇が深々と頭を下げる。そのまま動かなくなった零覇をやさしく見つめていたが、静かに声を掛ける。
「零覇、ウィーンに行く気はないか?」
突然の言葉に頭を上げた零覇は目を見開いていた。信じられないと顔に書く零覇に教授が説明する。
「数年前にお前が留学先として申し込んだところから言われてたんだよ。もし、零覇がもう一度戻ってくる気になったら、来るように伝えろってな。あちらさんもお前の才能をかなり買ってたからなぇ。お前に色々仕込むことをかなり楽しみにしてたらしい。どうせならいいって来るのもいいんじゃないか?」
瞳を揺らした零覇だが、出てきたのは辞退の言葉だった。
「俺にはそんな資格ないし、今はこいつらが居るから、すみません」
「けど、お前の夢だったろ海外留学!これが最後のチャンスだぞ⁈どうせ、暫くのブランクの所為で鈍ってるだろうし、その感覚を取り戻すにも良い機会だろ?」
暖稀が食い下がる。二人の真剣な顔に、零覇がどれだけ期待されたパティシエだったのがが、よく分かる。ヘンゼルは躊躇った。零覇はきっと行きたいのだろう。留学して修行すれば零覇はきっと世界的に有名なパティシエになることも夢ではない。だが。
ヘンゼルは唇を噛む。自分たちが邪魔になっている。彼に師事したいという思いが彼を縛っている。一言、行ってくれば?と言えれば…と思いつつも、なかなか口に出せない。ヘンゼルが躊躇っていたその時。
「……行ってきなさいよ」
グレーテルが、その背を押した。
「行きたかったんでしょ?で、今も行きたいんでしょ?だったら、答えは一つじゃない。私たちを言い訳に使ってんじゃないわよ」
ふん、と胸を張ってグレーテルが言い放つ。
「その代わり、世界一のパティシエになって帰ってきなさい!そうすれば、私たちの箔もつくし、外国の技術まで学ぶことできんだから、儲けもんよ!そうでしょ、ヘンゼル?」
本当はすぐにでも零覇に師事したいはずだ。それでも、その背を押した姿に、ヘンゼルの体からも力が抜ける。彼は苦笑して、零覇に言う。
「グレーテルの意見に賛成です。一度決めたら頑固にも守り通す貴方が迷うんだ。それって、行きたいって思ってるって事ですよね?ここまで来たら、もう少しのお預けも我慢しますよ」
「こいつらは俺が責任もってあずかろう。それでどうだ?」
間髪入れずに暖稀が追従する。それでも迷うそぶりを見せていたが、三人の表情に、くしゃりと顔を歪ませ、ポツリと零す。
「……すまん」
すると忽然と現れた王我が零覇にのしかかる。
「うちの可愛い弟妹をなめんなよぉ?こいつらだっていろいろ抱えて苦しみながらもここまで来たんだ。そんなこいつらにここまで言わせんだから、ちゃっちゃと行ってきて、それを還元してやれ」
珍しくまともな事を言ってる、と愕然とする双子。対称的に零覇は微苦笑して、そうだな、と呟き、王我を振り払うと双子に向き合う。
「悪い。少しだけ時間をくれ。今度はちゃんと色々学んで、それをお前らに伝えられるようにも頑張るから」
真正面から告げられる言葉に双子が笑う。
「ようやっと会えたね、魔法使いのお兄ちゃん」
ニッコリと笑ってグレーテルが零覇に告げる。くすぐったそうにそれを聞いた零覇が目を細める。ヘンゼルも嬉しそうにニコニコとしている。周りの者達も温かい目でそれを見守っていた。
数日後、零覇は旅立った。
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