ヘングレと魔法使い(パティシエ)
≪家出4≫
最近は、日記に愚痴を書くことが多い気がする。それもこれも、アイツらの所為だ。特に女。グレーテルというふざけた名前を平然と使っているあの女。何だかんだ、奴のペースに飲み込まれている気がする。それに、兄貴の方も何気にしたたかだ。普段は妹に振り回されてるくせに、ふとした時に突然したたかに交渉したり、丸め込んでくる。気付いたら寝泊りの許可までもぎ取っていくとか、全く、どんな教育をすればああなるのか。親の顔が見てみたい。
それにしても、最近のキッチンから菓子作りの音に交じって明らかに変な音が混じっている気がするんだが大丈夫なのだろうか。だが、心配はしない。してたまるかあんな奴らの事なんて。理由に免じて今回はキッチンを貸すが、それだけだ。
あいつらの気持ちは本気だ。いい職人になれる。だからこそ、俺ではだめだ。
パティシエの仕事から逃げた俺では。
だから。
早く出て行ってくれ。
(零覇の日記より)
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