ラッキーアイテムはオオカミさん NG集1
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カバンの中を確かめる。よし、オッケー。天気を確かめる。うん、飴は降ら無さそう。
……。飴は降らないかなぁ……。
-2-
鳥の声に夢中になって、上ばかり見上げていた純花は前から歩いてきた男の存在に気付かず、勢いよくぶつかった。こてんとひっくり返った純花はそのまま、視線を上げて相手を視界に写し。
「……ひぃっ」
一拍置いて、短い悲鳴を上げた。目の前に立った男は長身かつ、妙な迫力があった。なお悪いことに、その顔にはでかでかと不機嫌と書いていたのだ。実際はそうでもないのだが、恐慌状態の純花には、とんでもない凶悪な顔に見えた。一気に血の気が下がる。
「……」
顔色を無くしかたかた震える純花を一瞥した男は、にやりと意地悪く笑うと、胸のあたりを押さえた。
「いってぇなぁ」
「へ?」
急に男が発した言葉に、純花がきょとんとする。言葉の内容自体は理解が出来るのだが、なぜ、笑いながら言うのか。……M説⁈
カーーーーーーーーーット!!!! 違う、断じて違う!!!!
-3-
「どうしてここが分かったんですか?」
すると男はにやりと笑う。
「何でだと思う?赤井純花、さん?」
男の口から出てきた自分の名前に、純花が固まる。え、どうして、何で知ってるんでしょう?私名乗りましたっけ?名乗ってないですよね?ってことは…なに?この人超能力者⁈
カ――――――ット!!!!!! 落ち着いて純花ちゃん!!それは無いっての!!!
-4-
「私の生徒手帳⁈」
叫ぶと同時に無意識に手を伸ばす。しかし、あともう少しの所で、ひょいっとその手を避けられる。我に返った純花が慌ててカバンの中を漁る。そして、再び叫ぶ。
「無い⁈」
「そりゃそうだろ、ここにあんだから。何してんのお前?」
心底あきれ果てたと言わんばかりの男である。わたわたとする純花を見て、笑いの発作をどうにか堪えているようだ。
なんで、どうして?なんでこの人が持ってるの?まさか…この人のポケットって4次元ポケット⁈
カ――――――ット!!!! ちゃうねん!そんな訳あるかーい!!!
え、じゃあ、やっぱり超能力者⁈
カ――――――ット!!!!カ――――――ット!!!! だから違う言うてるやろが!!!!!!
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